苦しい夢を見た

 苦しい夢を見た。

 家族(Aとしよう)がスリッパで滑って頭を打ち、重い障害が残る。そのことに本人も気づいており、いつも辛そうな笑顔を浮かべている。あのスリッパがなければ、と私は悔しくてならない。

 と、なぜか、その家族がそうなる前の頃に戻っている。私も別の家族(Bとしよう)も「Aがそうなってしまう未来」を知っている。

 私とBは自宅からスリッパを無くして、Aに我々の「記憶」を説明し、ころんだり頭を打ったりしないように気をつけてと涙ながらに言う。

 まだ健常なAは笑顔でわかったと答える。他世界解釈的な私の話に、そういえばそういう(SF的な空想として話したのだろう)話をしてくれたことがあったわねといい、意味はわかるようだった。
 しばらくは無事な日々を過ごす。

 そして、ある日、Aが激しい心臓発作らしきものに襲われる。私は(結局こうなってしまうのか)というようなショックを受ける。Aは医学的知識があるのだが、「(今の状態の自分では)チェックリストを思い出せない」と悲痛な声をあげる。
 私はBと救急車を呼ぼうとするが、Bも私も動揺していて最初警察にかけてしまい、鳴るか鳴らないかのうちに切った。今度は正しい番号にかかる。
 そのあたりで目覚めた。

 起きて、実際に近しい家族が交通事故などで重い脳の障害を負ってしまった知人のことを思い、その苦悩を今まで十分に思いやることのできなかった自分を恥じた。

 とりあえずAに注意を促すべきだろうか。AEDの使い方は知っておくべきだろう。AEDを使うべきでない時があれば、それも。