有頂天ホテル
これ読んで思い出した、観に行こうと思ってたんだった。
私の想像では、高嶋(弟)がすごいことなってるんだと思う。
「姉さん、事件です」
「ホテル」というドラマで有名なこのセリフが150分の間繰り返される。出演23人の主演級俳優とかいっといて、じつは全部高嶋(弟)。
高嶋(弟)、渾身の演技で全員を演じ分ける。もう観客もその姿に涙なみだ。なだいなだも涙なみだ。
「姉さん、ぼくはまた厄介なことに巻き込まれてしまいそうです……!」
もう巻き込まれている証拠に、その映画で一人芝居させられてる。23人分園児、じゃなくて演じ分けてる。
でも、150分っていってもじつは前半後半分かれてんのね、インド映画みたいに。前半50分後半50分、休憩50分。ラグジュアリーな時間の使い方に観客も大満足。その間にトイレに行ったりお遍路に行ったりドラゴンボールを探しに出かけたり、時間を有効に使いまくる。そうさ、今こそアドベンチャー。
でもインド映画と違うのは、中休みで俳優(高嶋(弟))が休んでいる場面も上映されているところ。休憩中の高嶋(弟)も見もの。もうたばこスパスパ、足投げ出してADをあごで使い放題。あれ、映画の場合もADっていうんだっけ?まあなんでもいいや。と思わせるぐらいのすごい休憩ぶり、八面六臂の大活躍です。休憩なのに大活躍というのがミステリアスだけど、そこは観てのお楽しみ。
で、後半に突入。後半最初の10分ぐらいは高嶋(弟)がテンションを取り戻すので終わる。その辺は観客もわかっているので温かい目で見守る。そこからだんだんクレッシェンド。30分ほどかけて徐々に高まっていく「姉さん、事件です」。ああ、姉さん、全然関係ない私まで厄介なことに巻き込まれてしまいそうです……!と観客を引き込む名演技。高嶋(弟)はこの映画で昭和を代表する名優と呼ばれるね。化けた化けた。すごいはくりょく!!
そして
「姉さん! じ、事件です! ウヒョーッ!!♪」
まさに有頂天の瞬間。有頂天の意味を間違っているようで間違っていない高嶋(弟)。なぜならば高嶋(弟)、事件を報告することになにやら怪しげなエクスタシーを感じてしまったから。(やり遂げたよ、姉さん……)と両の拳を握りしめ、ほのかな笑顔でガッツポーズ。この時歴史が動いた(主にガッツポーズが原因)。どう動いたかも観てのお楽しみ。
あ、残り10分はだんだんその余韻がうすれていく過程を克明に追ったルポルタージュ。高嶋(弟)があれ?あれ?と周りを見回す。今のなんだったの?と言わんばかりに。イワンのばかに。たらばがに。そんな感じで不条理に画面が次々と移り変わっていく。どんどん変化が早くなっていく画面に断続的に映し出されるのは、高嶋(弟)の急速に冷えていく表情。最後に映し出されたのはがっくりと肩を落とす高嶋(弟)。しかしその顔には何かを受け入れたような、不思議な安らかさが浮かんでいた。暗転。
ああ弟よ、君を泣く。
私の予想を確かめに映画館に足を運んでみたいと思います。