私のこと


坂の多い港町にいた。


思いがけずに思いがけない人から麦茶をご馳走になり、帰りみち。

車に道を譲られ、同伴者に手で招かれて、電動車椅子でがたがたと商店街の横断歩道を渡る老婆を見た。
安そうな服で、不格好に片手を挙げている。折れそうに細い腕。
車のドライバーに感謝しているのか、それとも知的障害があり「横断時には挙手を」と教えられた習慣に従っているだけなのか。


あの老婆は、私だ。と感じる。


あの私の人生に、できるだけ楽しみがありますように。